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豆知識
2017/07/03

(その一) 「培養装置」って、どのようなものですか?

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まずは、「培養」って何のこと?

「栽培」とか「養殖」という言葉については、聞かれたことがあるでしょう。

「栽培」は人の手で丹精込めて植物を育てることです。花であれば主に鑑賞用ですし、野菜であれば、食用です。「養殖」は魚、貝、エビなどを決められた場所で餌などを与えながら人の手で育てていくことであり、やはり食用です。「培養」というのは、人の手で育てていく対象が微生物、藻類、動物細胞・植物細胞(あるいは組織)などであるということです。

「培養」という言葉を和英辞典で引くと”culture”と出てきます。また”culture”を英和辞典で引くと「文化」、「栽培」、「飼育」、「養殖」、「培養」などの訳語が出てきます。いずれも、人の手がかかって時間をかけて育むものであり、一朝一夕ではできないものであることが共通しています。

 

では、「培養装置」って何する装置?

微生物、藻類、動物細胞・植物細胞(あるいは組織)を培養する装置ということになりますが、これでは結局のところどうなの?ということが分かりませんよね。

「装置」というからには、「機械」の一種です。実は、「人の手で丹精込めて育てる」ことがcultureですが、人の手の代わりに「機械」を使って、細胞・組織が育っていくための面倒を見る働きをしてもらうのです。じゃあ「どのような面倒を見るの?」というと、快適な温度を保つ、よくかき混ぜて(「撹拌」という)、呼吸に必要な酸素を送る(「通気」という)、餌を補給する(「培地フィード」という)などを行います。

少し話がそれますが、北里大学特別名誉教授「大村智」先生をご存知ですよね?

大村智先生は土中から採取した微生物の中からアフリカなどで寄生虫による感染症に対して大きな治療効果を挙げているイベルメクチンという薬剤を開発して年間2億人の人々を失明することもある熱帯病の一種から救っているという偉大な業績によって2015年のノーベル医学生理学賞受賞に輝いたのでした。これは、有用な働きを持つ微生物を培養装置を用いて大量に育み増やすことにより、多くの人々に提供できる薬剤となっていくことがよく分かる例です。世の中には、同じようなプロセスを経て活躍している薬剤が多くあり、 培養装置は、それらを開発、生産していくお手伝いをしているということです。

次回は、「自分は、そのような分野とは何の関係もない経験しかないけれど大丈夫か?」ということにお答えします。